顧客生涯価値(LTV)の考え方:一度の売上でなく、付き合い全体で見る
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LTV は、一人の顧客が付き合いの間に生む利益
顧客生涯価値(LTV、Customer Lifetime Value)は、一人の顧客が最初の取引から離れるまでに、事業にもたらす利益の合計を見積もったものです。一回の売上ではなく付き合い全体で顧客を見ることで、広告や営業にいくらまで使えるかの上限を考える材料になります。
マーケティングの教科書では広く扱われる概念ですが、数値は前提の置き方で大きく変わります。計算式を覚えるより、何を入れて何を入れないかを自分の事業で決めることが先です。
組み立て方の基本
もっとも単純な形は、次のとおりです。
LTV = 1回あたりの利益 × 1年あたりの購入回数 × 取引が続く年数
月額制のサービスなら、「月あたりの利益 × 平均して続く月数」と考えます。ここでの「利益」は売上ではなく、その顧客に提供するためにかかった費用を引いた後の金額で見ます。売上で計算すると、実際より大きく見えてしまいます。
たとえば月額の利用料があり、原価や決済手数料、サポートに割く時間を引いた後の利益が月ごとに出ているとします。その金額に、これまで契約が続いた期間の実績を掛けて、一人あたりの目安を出します。
継続期間はどう見積もるか
LTV でいちばん不確かなのが、取引が続く期間です。月額制では、毎月どれくらいの人がやめるかを示す「解約率」から、平均の継続期間をおおよそ見積もります。解約率が一定なら、平均の継続月数は 1 ÷ 解約率 で近似できます。
ただしこれは、解約率が一定で、取引の期間がじゅうぶんに長い場合の近似です。始めたばかりの事業では、実績が少なく、数か月分のデータしかないことが普通です。その場合は、出た数字を確定値ではなく仮の値として扱います。
単発の商品では、同じ客が再び買うまでの間隔と、再購入した人の割合を実績から数えます。再購入の記録がまだ少ないなら、LTV を出さずに「リピートがあるか」を見るだけにとどめる判断もあります。
何と比べて使うか
LTV は単独では判断材料になりません。顧客一人を獲得するのにかかった費用(獲得コスト)と並べて初めて意味が出ます。
獲得コストには、広告費だけでなく、営業や見積もりにかけた時間も入れます。自分の時間を数えないと、獲得コストが実際より低く見えます。
LTV が獲得コストを大きく上回っているなら、集客に投資する余地があります。下回っているなら、獲得コストを下げるか、継続期間や単価を上げる方法を考えます。何倍あれば十分かという目安はよく語られますが、業種や資金繰りによって適切な水準は違うため、他社の数字を基準にしないほうが安全です。
数字を使うときの注意
LTV を使うときの落とし穴は三つあります。
一つ目は、平均の落とし穴です。長く続く少数の顧客が平均を引き上げ、大半の客は短期間でやめている場合があります。平均だけでなく、分布も確認します。
二つ目は、将来の利益を現在の価値としてそのまま足してよいか、という点です。資金に余裕が少ない小さな事業では、何年も先の利益より、数か月以内に回収できるかのほうが大切な場合もあります。
三つ目は、客層で値が違うことです。入口の商品や紹介経路ごとに、続く期間も単価も変わります。全体の平均だけで広告の予算を決めると、有望な客層を見落とします。
LTV を高める3つの方向
LTV を上げる方法は、大きく3つに分けられます。
- 続く期間を延ばす:使い始めの数か月に、つまずく点を減らす。解約の理由を聞き、多いものから直す
- 1回あたりの利益を上げる:関連する商品や、上位の内容を案内する。無理に勧めず、必要としている人にだけ出す
- 購入の頻度を上げる:再び必要になる時期に、連絡をとる。メールや購入履歴の記録が手がかりになる
紹介も、獲得コストを下げながら新しい顧客を得る方法です。ただし、紹介がどれだけ起きているかは、記録しないと分かりません。顧客に「どこで知りましたか」を聞く一行を、申し込みの流れに入れておくと、経路別の数字を出せます。
これらの施策は、すべて顧客との会話から始まります。数字の背景にある理由は、数字だけでは見えません。
記録の取り方
LTV を出すために必要な記録は、多くありません。顧客ごとの、最初の取引日、取引の日付と金額、最後の取引日、来た経路の4つです。表計算ソフトの1枚の表で足ります。
会計ソフトや決済サービスに記録が残っているなら、そこから書き出すこともできます。最初は不完全でかまいません。記録を始めた日から先は、集計できる状態にしておくことが大切です。数か月たてば、継続期間や再購入の傾向が、実績として見え始めます。
数字を出したあとは、その前提を一行ずつメモに残します。どの期間の実績か、何を費用に入れたか。半年後に見直すとき、前提が分かれば、変化の理由を追えます。
次にやること
- 過去の顧客を、取引が続いた期間か購入回数ごとに並べる
- 一人あたりの利益を、原価・手数料・自分の作業時間を引いて計算する
- 客が来た経路ごとに、続いた期間の平均を出す
- 獲得コスト(広告費と、かけた時間)を経路ごとに出して並べる
- 回収に何か月かかるかを見て、広告や営業に回す予算の範囲を決める
記録が足りない場合は、まず顧客ごとの取引日と金額を表にまとめ始めてください。会計や税務の扱いは、税理士に確認してください。