一人で事業を回す人のための、集中時間のつくり方:ディープ・ワークの考え方
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ディープ・ワークは「邪魔されずに取り組む、頭を使う仕事」
ディープ・ワークとは、気が散るものを遠ざけ、認知的に負荷のかかる作業に集中して取り組むことです。コンピューター科学者のカル・ニューポート(Cal Newport)が、2016年の著書『Deep Work』で使った言葉で、価値を生む難しい仕事は、この状態で進むと主張しています。対になる概念が「シャロー・ワーク」で、メールの返信や事務連絡のように、頭をあまり使わず、中断されても進められる作業を指します。
一人で事業を回す人は、営業も制作も経理も自分で担うため、細切れの作業に時間を取られがちです。商品づくりや記事の執筆のように、まとまった集中が要る仕事をどこで確保するかが課題になります。
集中が切れる理由
作業を切り替えると、前の作業のことが頭に残り、次の作業に注意が向きにくくなる、という研究があります。心理学者のソフィー・ルロワ(Sophie Leroy)が2009年に論文で「注意残留(attention residue)」と呼んだ現象です。通知を見るたびに、作業は止まるだけでなく、戻ってからも少しのあいだ質が下がる可能性があります。
ただし、この分野の研究は、条件や対象の違いで結果が変わります。「何分で戻れる」といった具体的な数字は、そのまま自分に当てはめず、自分の作業でどれくらい戻るのに時間がかかるかを観察してください。
集中時間の作り方は、4つの型から選ぶ
ニューポートは、ディープ・ワークを生活に組み込む型を4つ挙げています。
- 修道院型:連絡や雑務を大きく減らし、深い仕事だけに集中する生活
- 二分型:数日から数か月を集中用、残りを通常の仕事に分ける
- リズム型:毎日、決まった時間帯を集中用にする
- ジャーナリスト型:空いた時間を見つけて、すぐ集中に切り替える
顧客対応が日常的にある小さな事業では、リズム型が取り入れやすい型です。たとえば毎朝9時から11時を、制作専用の時間にします。
実際に時間を確保する工夫
時間帯を予定として固定する
集中用の時間を、カレンダーに予定として入れます。空いたら集中する、という運用では、他の用事に押し出されます。
連絡の窓口を、時間で区切る
メールやチャットは、集中時間の外で、1日に2〜3回まとめて見ると決めます。急ぎの連絡があり得る場合は、その連絡手段(たとえば電話)だけを通す設定にします。顧客に「返信は営業日の夕方までにお送りします」と伝えておくと、すぐ返さない負担が軽くなります。
始める前に、やることを一つに絞る
集中時間の最初に、その時間で終えたい成果物を一つ決めます。迷う時間が減ります。
終わりを決める
集中は長く続けるほど質が落ちやすいため、2時間前後で区切り、休みを入れます。1日に何時間できるかは人によります。無理に伸ばさず、続けられる時間から始めます。
限界と注意
ディープ・ワークは、すべての仕事に向くわけではありません。顧客からの問い合わせにすぐ応じることが価値の事業では、連絡を断つ時間を長く取れません。また、本の主張は、著者の観察や事例に多くを負っており、効果を厳密に検証した試験ではありません。自分の仕事で効果があるか、試して確かめる姿勢が必要です。
小さな事業で起きやすい壁
集中の枠を作っても、顧客からの急ぎの連絡や、自分の気の緩みで崩れることがあります。崩れた日は、枠を1日あきらめて翌日に戻す程度に考えます。完璧に守ることより、週に何回枠を確保できたかを数え、増やしていくほうが続きます。
また、集中の前後の準備も影響します。必要な資料を前日に机に出しておく、ブラウザのタブを閉じておく、といった小さな準備で、始めるまでの時間が短くなります。
集中時間を確保すると、顧客や取引先との連絡は遅くなります。連絡の頻度が成果に影響する仕事なら、集中の枠を短くするか、時間帯を相手の都合が少ない朝夕にずらします。
次にやること
- 今週の作業を、集中が要るものと、細切れでよいものに分ける
- 集中が要る作業のために、毎日または週数回、90分〜2時間の枠をカレンダーに入れる
- その枠の間は、通知を切り、連絡を見る時間を枠の外に決める
- 枠の最初に、終えたい成果物を一つ書く
- 2週間続けて、成果物の数と、気づいたことをメモし、枠の時間帯を調整する