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仕事を見える化して、同時進行を絞る:かんばんの考え方

公開日

かんばんの核は、見える化と「同時に抱える数の上限」

かんばん(看板)は、いま何の仕事がどの段階にあるかを札で見えるようにし、同時に進める数に上限を置く方法です。仕事が増えて頭の中で管理しきれない、手を付けた案件が終わらない、という悩みに向いています。

もとは、トヨタ生産方式の中で生まれた仕組みです。大野耐一が、後工程が使った分だけ前工程が作る形をめざし、部品に付けた札(かんばん)で補充の合図を出す方法を整えました。作りすぎによる在庫の無駄を減らすことが目的でした。この発想を、ソフトウェア開発の現場にデヴィッド・J・アンダーソンが持ち込み、2010年の著書『Kanban』で整理しています。いまは、知的な仕事の管理にも広く使われます。

ボードの作り方

紙の付箋でも、無料のボードツールでも構いません。列は、仕事の段階に合わせて3〜5つ作ります。

  • 予定(やる可能性がある)
  • 作業中
  • 確認待ち(相手の返事、自分の見直し)
  • 完了

1つの仕事を1枚の札にして、段階が進むごとに右へ動かします。こうすると、どこで仕事が滞っているかが目で分かります。「確認待ち」に札がたまっていれば、返事をもらう段取りか、自分の見直しの時間が足りないのかを疑えます。

仕掛かりの上限を置く

効果が大きいのは、「作業中」の列に置ける札の数に上限を決めることです。たとえば、同時に進める案件は3つまで、とします。上限に達したら、新しい仕事を始めず、まず何かを終わらせます。

これには理屈があります。待ち行列の分野の「リトルの法則」は、平均の所要時間が、仕掛かりの数を完了のペースで割った値になる、と示します。つまり、完了のペースが同じなら、同時に抱える数が多いほど、一件あたりの完了までの時間は長くなります。同時に手を付けるほど、全部が遅くなる、ということです。

また、仕事の切り替えには、思い出し直す手間がかかります。上限を置くことは、その手間を減らす効果もあります。

失敗しやすい点

  • 上限を決めても、緊急の依頼のたびに破り、上限が飾りになる
  • 列が多すぎて、更新が負担になる
  • ボードを作っただけで、見直しをしない

緊急の依頼については、最初に取り扱いを決めておきます。たとえば、緊急枠を1つだけ別に置く、という形です。上限は固定ではなく、1〜2週間やってみて、詰まりすぎるか、余裕が出すぎるかを見て調整します。

かんばんは、複数人が受け渡しする流れでいちばん力を発揮します。一人の場合は、見える化と上限で「手を付けっぱなし」を減らす道具として使うのが現実的です。

列の名前と数の決め方

列は、最初は少なく始めます。作業の段階を細かく分けるほど、更新が面倒になります。続けるうちに「確認待ちが多すぎる」「下書きと仕上げを分けたい」と感じた時点で、列を足します。

札に書く内容は、動詞を含む作業の単位にします。「A社の件」より、「A社の見積書を送る」のほうが、終わったかどうかを判断できます。札が大きすぎて何日も動かないときは、小さく割ります。

流れを測る

慣れたら、札を「作業中」に動かした日と、完了した日を札に書きます。完了までの日数が分かると、自分の仕事のふつうの速さが見えてきます。「この種類の依頼は、だいたい何日かかるか」が分かれば、お客様への納期の約束も、根拠を持って決められます。

数字を細かく取る必要はありません。まずは平均的な日数を知るだけで、見積もりの判断が変わります。

ボードは、毎朝の最初に1分だけ眺める習慣にすると定着します。今日動かす札を1〜2枚決めるだけで、1日の優先順位がはっきりします。週の終わりには、完了の列に並んだ札を見て、進んだ分を確認すると、続ける気持ちを保ちやすくなります。

次にやること

  1. 今抱えている仕事を、すべて1件1枚の札に書き出す
  2. 「予定・作業中・確認待ち・完了」の4列に並べる
  3. 「作業中」の上限を、まず3つに決める
  4. 上限に達したら新しい仕事を始めず、1つ完了させてから次に進む
  5. 2週間後、札が止まっている列を見て、上限か列の数を調整する
仕事を見える化して、同時進行を絞る:かんばんの考え方 | SVH Applied AI Program