ネットワーク効果と、小さな事業が紹介・口コミに生かせること
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ネットワーク効果は、人が増えること自体が価値になる性質
ネットワーク効果とは、使う人が増えるほど、その商品やサービスの価値が高まる性質です。電話が代表例で、持っている人が自分一人なら役に立たず、周りの人が持つほど価値が増します。メッセージアプリ、フリマや予約の仲介サービスなどで見られます。経済学では、1980年代にカッツ(Katz)とシャピロ(Shapiro)らが「ネットワーク外部性」として論じてきた概念です。
小さな事業が気にするべきなのは、自分の商品がこの性質を持つのかどうか、そして口コミや紹介をそれと混同していないか、の2点です。
ネットワーク効果の2つの形
- 直接型:利用者が増えるほど、同じ種類の利用者にとって価値が増す(通話アプリなど)
- 間接型(両面型):売り手と買い手のように、2種類の参加者がいて、片方が増えるともう片方の価値が増す(仲介の場など)
ネットワークの価値は利用者数の2乗に比例する、とする「メトカーフの法則」という考え方も知られています。ただし、これは単純化した見方で、実際には利用者が増えても価値が比例して伸びるとは限りません。関係の薄い利用者が増えても、価値はあまり増えません。
口コミや紹介は、ネットワーク効果とは別のもの
ここが混同されやすい点です。お客様が知人に勧めて新しいお客様が来るのは、集客の経路です。ネットワーク効果は、お客様が増えること自体で、商品の中身の価値が上がる性質を指します。
たとえば、学習塾が口コミで生徒を増やしても、生徒数が増えたから授業が良くなる、とは限りません。紹介で広がるのは認知であり、商品の価値そのものが高まるのとは違います。
この違いを理解しておくと、「紹介で増えるはず」と期待するだけで、仕組みを作らないという失敗を避けられます。
小さな事業が生かせること
商品自体にネットワーク効果がなくても、近い働きを部分的に作れる場合があります。
- お客様同士がつながる場を作る:ユーザーのコミュニティや交流会があると、参加者が増えるほど場の価値が上がる
- 使い方や事例が蓄積される:お客様が作った作品や質問と回答が増え、新しい人にも役立つ
- 共有しやすい形にする:成果物にお客様が自分で共有できる形(招待リンク、共同作業の機能)を持たせる
- 紹介の動機を用意する:紹介した側と、された側の双方に利点がある形にする
ただし、紹介に対して金銭や特典を渡す場合は、広告であることを分かる形で示す必要があります。日本では2023年10月から、広告であることを隠した表示(いわゆるステルスマーケティング)が景品表示法で規制の対象になっています。仕組みを作る前に、表示のルールを確認してください。
生かせないこと
- 利用者が少ない段階では、ネットワーク効果は働かない。最初の利用者に価値を出す必要がある
- 商品が個人向けの完結したサービス(個別の相談や制作)なら、利用者が増えても価値は増えにくい
- 紹介の仕組みは、商品に満足していなければ広がらない
- 勧められた数を増やすために、無理な特典を付けると、利益を削る
小さく始めるなら
最初から仕組みを大きく作る必要はありません。たとえば、購入後のメールに「同じ悩みの方へ共有できる案内」を一文添える程度から始められます。紹介が実際に起きるか、起きた紹介は継続するかを見てから、手間をかけるかを決めます。
自分の事業が、ネットワーク効果の強い領域に入ろうとしているなら注意が要ります。すでに大きな利用者を持つ大手のサービスと同じ土俵で、後から始めても、利用者の多さという差を埋めるのは難しいためです。小さな事業は、特定の地域や職種に絞り、その範囲で顔の見える関係を作るほうが、現実的な選択になります。
最後に、紹介が起きた理由を、紹介を受けたお客様に尋ねておくと役立ちます。何が決め手で、どんな言葉で勧められたかは、自分では気づきにくい強みを教えてくれます。
次にやること
- 自分の商品について「利用者が増えると、既存の利用者にも良くなる点があるか」を書き出す
- 答えが「ない」なら、紹介や口コミを集客の経路として別に設計すると割り切る
- 紹介してくれたお客様に、お礼を渡す場合は、表示のルールを確認して方法を決める
- お客様同士が情報交換できる場(メールの返信欄、小さな集まり)を、小さく試す
- 3か月後に、紹介経由の新規数と、その継続率を記録して見直す