ポジショニングと、一言で覚えてもらう言葉の決め方
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ポジショニングは、相手の頭の中に置く場所を決めること
ポジショニングとは、商品を作り変えることではなく、見込み客の頭の中でどんな存在として覚えてもらうかを決めることです。Al Ries と Jack Trout が1981年の著書『Positioning』で広めた考え方で、この言葉自体は1969年の記事で使われ始め、1972年の連載で広まりました。「何をしている人か、一言で言えない」と感じている個人や小さな会社に役立ちます。
出発点は、情報があふれていること
著者たちが前提にしたのは、人は多すぎる情報を受け取れないという状況です。人の頭は、覚える余地が限られています。そこで、似た商品の中から、すでにある「この分野ならこれ」という記憶の棚にどう入り込むかが問題になります。
だから、新しい良さを足すより、相手が持っている印象の中に自分の場所を見つけることが大事だ、というのが主張の中心です。特に、すでに定着している競合の位置とは別の位置を探す点が強調されています。
一言を決める手順
自分の事業の一言を決めるには、次の順に考えます。
- 誰に向けるか 全員は選べません。最初に買ってくれそうな客を一種類に絞る
- その客が使う比較対象は何か 客は、競合他社だけでなく、自分でやる、何もしない、とも比べている
- 比較対象にできなくて、自分にできることは何か 技能、経歴、扱う範囲、スピード、価格、対応のしかたなど
- それを客の言葉で一文にする 自分たちの専門用語を使わない
たとえば「税金に強い」では広すぎます。「個人事業主の確定申告の相談だけを受ける」のように、客と範囲が見えると、相手の頭に残りやすくなります。
言葉を点検する
書いた一言は、次の問いで確かめます。
- 初めて聞いた人が、何をする人かを言い直せるか
- 競合の誰かも同じことを言えないか
- 本当にそれを裏づける実績や中身があるか
- 範囲が狭すぎて、今いる客を自分から断ることにならないか
言い直しをしてもらうのがいちばん分かりやすい方法です。知人に一言だけ伝え、後日「どんな人だったか」と聞き返します。違う言葉が返ってきたら、伝わっていません。
限界と注意
ポジショニングは、一度決めたら終わりではありません。市場や競合は変わるため、数年単位で見直す必要があります。また、範囲を絞れば客は減りますが、選ばれる理由は強くなります。この釣り合いは、事業の規模や状況で変わります。
実際にできないことを一言に入れるのは避けます。印象と中身がずれると、かえって信頼を失います。
言葉を実際の場所に置く
一言が決まったら、客が最初に目にする場所へ置きます。名刺、自己紹介の1行目、サイトの最初の画面、SNSのプロフィールなどです。場所ごとに言い方が違うと、覚えてもらいにくくなります。
同じ言葉を繰り返し使うことも大切です。自分では言い飽きても、相手にとっては何度か目にして初めて残ります。言い回しを頻繁に変えるのは避け、変えるなら理由を持って変えます。
あわせて、一言と矛盾する商品を、まだ売っていないかも確認します。一言で絞った客層に合わない商品が並んでいると、印象がぼやけます。
一言を決める作業は、一人で考えるより、実際の客の言葉を材料にするほうが進みます。過去の問い合わせやレビュー、打ち合わせでの発言から、客が自分たちをどう呼んでいたかを拾います。客が自然に使っていた言い方は、そのまま相手に通じる言葉の候補になります。
自分では当たり前だと思っている強みほど、客の側から見ると珍しいことがあります。第三者の目を借りて、何が選ばれた理由だったかを聞いてみてください。
次にやること
- 一番買ってくれそうな客を、一種類だけ書く
- その客が今、代わりにしていることを3つ挙げる
- 自分だけが言える特徴を3つ書き、客の言葉で一文にする
- 知人2〜3人にその一文だけを伝え、後日どんな人か聞き返す
- 返ってきた言葉を見て、一文を直す