仕事を「職業」でなく「作業」で見る:AIに渡す作業の切り出し方
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「この仕事はAIに置き換わるか」より、「この作業は任せられるか」
仕事を職業の名前でひとまとめに見ると、AIに任せられるかどうかの判断が粗くなります。経営者の仕事、デザイナーの仕事、事務の仕事は、それぞれ多くの作業の束です。作業ごとに分けて見たほうが、任せられる部分を具体的に見つけられます。
この見方は、経済学者のデヴィッド・オーター、フランク・レヴィ、リチャード・マーネインが2003年に発表した論文で示したものです。職業ではなく、そこで行われる作業を分析の単位にし、コンピュータが何を代わりにやり、何を人に残すかを調べました。
研究が示した分類
論文は、作業を二つの軸で分けます。
- 定型的な作業か、非定型的な作業か
- 頭を使う作業(認知)か、体を動かす作業(手作業)か
定型的な作業とは、手順を規則として書き下せる作業です。論文は、そうした作業はコンピュータで代替されやすく、一方で、規則に書きにくい問題解決や対人のやり取りを含む非定型の作業は、コンピュータと補い合う、と整理しました。実際のデータを使い、定型的な作業の比重が下がったことを示しています。
職業全体で自動化の影響を見積もる研究と、作業単位で見る研究とでは、結果が異なります。たとえば経済協力開発機構(OECD)の研究者らが2016年に発表したワーキングペーパーは、作業単位で見ると、職業単位より代替されやすい仕事の割合が小さく見えると報告しています。見方によって数字が変わるため、どの数字も目安として読んでください。
なお、2003年の研究はAIの話ではありません。当時の「コンピュータ」を対象にした分析です。作業の見方は今のAIにも使えますが、「何が定型か」の境目は技術とともに動くので、固定の線として扱わないでください。
AIに渡す作業の切り出し方
自分の仕事を作業に分けるには、まず1週間の仕事を、10〜20分程度の単位まで書き出します。「営業」ではなく、「問い合わせ内容の要約」「返信文の下書き」「訪問日程の調整」というところまで割ります。
次に、各作業を次の問いで見ます。
- 入力と出力が、言葉で説明できるか
- 良い出来の基準が、書き出せるか
- 間違えたとき、人が確認して直せるか
- 相手との信頼や、責任の判断を要するか
最初の3つに「はい」、最後に「いいえ」なら、渡す候補です。たとえば、問い合わせの要約や、定型的な返信の下書きは、確認してから使う前提で渡しやすい作業です。価格交渉や、お詫びの判断のような、責任の重い部分は自分に残します。
渡し方の工夫
作業を渡すときは、入力、出力の形、守る基準、禁止事項を指示文に書きます。1つの作業に一つの指示を対応させると、確認しやすくなります。大きな作業を一度に渡すより、小さく切って、出力を人が確認してからつなぐほうが、間違いの原因を特定できます。
作業の棚卸しで見落としやすい点
作業を書き出すと、「考える時間」や「待ち時間」、「判断」が抜けやすくなります。たとえば「返信文を書く」の前には、内容を確認し、相手の状況を思い出す作業があります。ここを飛ばして文章作成だけを渡すと、AIに必要な情報が届かず、期待した出力になりません。
作業を渡す前に、それを実行するために自分が頭の中で使っている情報を、書き出してください。過去のやり取り、価格の決まり、言葉づかいの好みなどです。これが指示文の材料になります。
渡した後の見直し
作業は、一度切り出して終わりではありません。渡した作業の出力を確認する時間が、自分でやる時間と変わらなければ、渡す意味は小さくなります。1か月ごとに、確認にかかった時間と修正の量を見て、指示を改善するか、自分に戻すかを決めます。
また、仕事の構成は変わります。新しい依頼が来たり、事業の方向が変わったりしたら、作業の一覧を作り直してください。
作業の単位が小さいほど、渡しやすさの判断も早くなります。迷ったときは、「新しく入った人に、この説明だけで頼めるか」を目安にしてください。頼めるなら、AIにも渡せる可能性があります。説明が長くなりすぎるなら、作業がまだ大きいか、自分の中の基準が言葉になっていないということです。
次にやること
- 1週間の仕事を、10〜20分単位の作業として20個ほど書き出す
- 各作業について、入力・出力・良い出来の基準を一行ずつ書く
- 責任の判断や信頼に関わる作業を、自分に残す側へ分ける
- 残った中から、確認しやすい作業を1つ選ぶ
- その作業の指示文を書き、出力を自分で確認しながら1週間試す