仕事の詰まりを1か所ずつ外す:制約理論の5つの手順
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全体の速さは、いちばん遅い工程で決まる
制約理論(Theory of Constraints)は、仕事の流れ全体の成果は、最も処理が遅い一つの工程で決まる、と考えます。その工程を「制約」と呼びます。制約でない所をいくら速くしても、全体の成果はほとんど変わりません。
イスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラットが、1984年の小説形式のビジネス書『ザ・ゴール』(ジェフ・コックスとの共著)で広めました。工場の生産を題材にしていますが、考え方は工場に限りません。依頼を受けて納品するまでの流れ、記事を書いて公開するまでの流れなど、順番に進む仕事なら当てはまります。
5つの集中ステップ
ゴールドラットは、制約を扱う手順を5段階で示しました。
- 制約を見つける
- 制約を最大限に活かす(今の制約に、無駄な時間を使わせない)
- 制約以外の工程を、制約に合わせる
- 制約の能力を引き上げる(人を増やす、道具を買う、外注するなど)
- 制約が移ったら、1に戻る(惰性で前の対策を続けない)
順番が大事で、4を先にやると費用がかかります。2と3だけで、思った以上に動くことがよくあります。
一人の仕事での見つけ方
まず、仕事の流れを工程に分けて書き出します。たとえば、問い合わせ、ヒアリング、見積もり、制作、確認、請求、という具合です。
次に、各工程で「待っているもの」を探します。受注した案件が山になっている工程が制約の候補です。待ち行列は、制約の手前にたまります。逆に、制約の後ろは手が空いています。
数字を取るなら、各工程にかかる時間の目安と、そこで止まっている件数を紙に書きます。精密である必要はありません。多くの場合、体感でも「ここだ」と分かります。制約が自分の時間そのものである場合もあります。その場合は、自分の時間のうち、本来制約の工程に使うべき時間が、別の作業に流れていないかを見ます。
外し方の例
見積もりが詰まりの場所だと分かったとします。ステップ2では、見積もりの時間を他の用事で削らないよう、時間帯を固定します。ステップ3では、見積もりの前の問い合わせ対応を、見積もりに必要な情報を最初にまとめて聞く形に変え、やり取りの往復を減らします。
ステップ4まで進むなら、よくある見積もりの型を作って流用する、一部をAIや外注に任せる、といった手が候補になります。ただ、その前に2と3で足りるかを確かめます。
制約を一つ外すと、次の制約が現れます。見積もりの次は制作が詰まる、というように、場所が移ります。それがステップ5です。一度外して満足せず、数週間ごとに流れを見直します。
限界と注意
この考え方は、順番に流れる仕事に向いています。工程がバラバラで独立している仕事や、毎回内容が大きく違う仕事では、制約が特定しにくくなります。
また、制約を「最大限に活かす」という言葉を、自分を限界まで働かせる意味にとらないでください。目的は、制約の工程で無駄な時間を減らすことで、長時間働くことではありません。
ゴールドラットの理論は、会計や生産計画の分野で議論もあり、すべての主張が同じ程度に検証されているわけではありません。流れの詰まりを見つける道具として使うのが現実的です。
外した後に起きやすいこと
制約を外すと、これまで制約の手前で止まっていた仕事が一気に流れ込み、次の工程があふれることがあります。たとえば見積もりの速度を上げたら、制作の依頼が一度に増え、納期が危うくなる場合です。外す前に、次の工程の余力を見ておくと、受注の入り口を調整できます。
もう一つの落とし穴は、制約でない工程を忙しく保つことです。制約でない工程が空いているのは、無駄ではなく、制約に合わせた結果です。空き時間を埋めるために新しい仕事を仕込むと、制約の手前に待ち行列が増えます。空いた時間は、制約を支える準備、たとえば見積もりの型づくりに回すほうが、全体の成果につながります。
制約が外部にある場合
制約は、自分の作業ではなく、市場や取引先の側にあることもあります。依頼そのものが少ない場合は、工程をいくら整えても成果は増えません。そのときの制約は集客や紹介の数であり、見る場所が変わります。仕事の流れの外にも制約がありうる、と頭に置いてください。
次にやること
- 一つの仕事(受注から納品、記事の公開など)を、5〜8の工程に書き出す
- 各工程の前で、待っている件数や日数を書く
- いちばん待ちが多い工程を、制約の候補に決める
- その工程を邪魔している作業を1つ減らすか、時間帯を固定する
- 2週間後に流れを見直し、詰まりの場所が移ったかを確かめる